【声明】トランス差別を許さない、真に解放された女性学研究の場を!〜日本女性学会2025年大会に際して〜

印刷された白い用紙が互い違いに、十字状に積まれている。黒字で「女性学がんばれ!負けるなフェミニズム!」の文字が書かれている。

当会は、日本女性学会2025年大会(6月7日・8日)の開催に際して、同会員たるフェミニストの皆様に、以下の声明を発出します。

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トランス差別を許さない、真に解放された女性学研究の場を!


日本女性学会2025年大会に参加される皆様へ


こんにちは。

私たちは、フェミニズム運動におけるシスジェンダー中心主義の転換を実現するべく活動しているグループです。


日本女性学会第23期幹事会は2月21日、昨年6月9日に武蔵大学江古田キャンパスにて開催された2024年度大会におけるひとつの分科会において、「トランスジェンダー当事者やトランスジェンダーの権利擁護の立場をとる参加者に対する攻撃や侮辱」(p13)があったことなどを認める調査報告書発表しました。

わたし達は、この事態を大変深刻に受け止めています。


幹事会はこの報告書の提出を受け、"日本女性学会は今回の指摘、批判を真摯に受け止め、「学会活動の自由と公正のための宣言」(2006 年6月10日、日本女性学会総会において採択)に基づいて、大会を含めた学会運営の改善を検討してまいります"とのコメントを発表しましたが、その後具体的にどのような取り組みがなされることになったのか。何らアナウンスはないまま本日、日本女性学会は2025年大会を迎える運びとなりました。

一方その間、皆さんの学会活動に対する私たちの憂慮は、更に深いものとなりました。

3月18日付けにて発行された、日本女性学会発行「学会ニュース」第162号(ニュースレターN0.162)には、問題を指摘されたH分科会の報告記事が掲載されました。

同分科会にパネル報告者兼司会者として登壇した森田成也さんは、調査報告書において複数の問題を指摘されていながら(註1)、そのことには何ら言及することがないまま、上記「学会ニュース」において「全体として報告に賛成する立場からも批判する立場からも意見が出され、民主主義的な討議の場を保障するものであった」と、2024年のH分科会を振り返っています。

この報告文が掲載された次頁には、第23期幹事会からの「お知らせ」と題して、事件の経緯と上述の幹事会によるコメントが、調査報告書のQRコードとともに掲載されていますが、この二つの記事が何の関係も示されることもないままに並列されているという事態に、私たちは、日本女性学会が謳う「学会活動の自由と公正」(註2)の実際を見る思いです。

今再び日本女性学会において「学問の自由」を口実としたトランスジェンダー差別が行われることは、決してないと断言できるのか?残念ながら私たちは、皆様の学会活動の在り方に深い懸念を抱かざるを得ません。


この未だ強固な男性中心主義社会たる日本において、日本女性学会は永らく、単に「文化国家の基礎」(註3)としての学問研究の場というに留まらず、必ずしも「アカデミー」に属するのではない多様なフェミニストが集い、交流し、探究を行う場としても、重要な役割を担ってきたと私たちは考えています。

日本女性学会が、昨年引き起こされたトランス差別の扇動という事態を看過せず、真に「あらゆる形態の性差別をなくし、既成の学問体系をこえた女性学の確立をめざ」(註4)す活動に復帰できるかのか、どうか。幹事会はもとより、それはまったく会員たる皆さんひとり一人の手に委ねられているという以外にありません。

真に解放されたフェミニズムの実践を目指すフェミニストとして。どうか一緒にトランスジェンダー差別に反対の声をあげてください。女性学を、トランスヘイターの手に明け渡さないでください。

私たちは、あらゆる性差別を憎み、女性差別の根絶のために学究せんとする皆さんと共に在りたいと願っています。


女性学がんばれ!
負けるなフェミニズム!

2025年6月7日
フェミニス虎


註1調査報告書」において指摘された森田成也による発言の一例を以下に引用する。なお、問題の分科会がH分科会であること、および調査報告書にある「B氏」が森田成也であることは、「調査報告書」の内容および公開されている情報、また関係者による手記などから明らかである。

    p5 " 質疑応答における B 氏の発言は、このように長い時間をかけてトランスジェンダーというマイノリテ ィの人権運動の中心となり、当事者にとって自己存在を説明するうえで非常に重要である「性自認」という概念を、マジョリティの立場から学術的議論の俎上にあげることの重みや、当事者への影響、当事 者への敬意や配慮を欠いたものと捉えられる。"
    p5 " B 氏は、「自認によって性別を変えられる」と主張する ことは、「地球は真っ平らだと言ってるのと一緒」だと主張している。こうした発言が、これまでのトランスジェンダーの運動のあり方を否定するだけでなく、人生を通じて自身の性自認が大切にされない 経験を積み重ねるトランスジェンダーの当事者にとって自身の人格に対する否定であると受け止めら れ、人生の傷つきやトラウマをさらに深めるものとして経験されたことは想像に難くない。"
    p12 " B 氏による 「でたらめ」「ナンセンス」という発言は、こうしたトランスジェンダーの合理性の否定という典型的な差別言説をなぞるものである。"


註2 日本女性学会「学会活動の自由と公正のための宣言」参照。


註3 【日本学術会議法 前文】

日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される。


註4日本女性学会規約

第2条 本会はあらゆる形態の性差別をなくし、既成の学問体系をこえた女性学の確立をめざし、そのための研究および情報交換を行なうことを目的とする。

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