【読書会】<アナルセックス•パニック> に動ぜぬために

画像とテクスト。  真ん中から放射線状に広がる、虹色グラデーションの渦のような模様。向かって右から、渦の中心に向かって飛び込んでいく虎。  下記のテクスト。   フェミニス虎☆読書会 「その場で読んで、考える」 <アナルセックス•パニック> に動ぜぬために 取扱テクスト:「安全に楽しめ」は、誰の安全か(郡司真子)   ■日時 10月3日(土) 午後18時~ 飯田橋(東京都) 資料代200円(カンパ歓迎)  要申込み⇒webから

2026年8月。アナルセックス(肛門性交)をめぐって、SNS上で激しい意見の対立が起きました。

男性だろうが女性だろうがノンバイナリーだろうが、アナルセックスは安全に楽しんでね!」(註1)

本文と共に、「男性のアナルセックス 安心・安全に行うポイント」と題されたサイト(註2)のURLを付して行われたこの投稿は計57万回以上閲覧され(2026年9月3日調べ)、投稿者には夥しい数の批判、誹謗や中傷、脅迫のメッセージまでもが寄せられました。

反対を唱えた人々の多くは、「ジェンダー・クリティカル(GC)」の潮流にあると言ってよい人々です。その後、投稿主であるフェミニズム・クィア研究の学者で、大学教員であるゲンヤ(福永玄弥、@GenyaFukunaga)さんは、一連の事件を振り返って「アナルセックス・パニック」と評しました。

(※論争の経緯は、ページ下部に参考資料として掲載しています。) 

当時の本人の投稿を見れば明らかですが、ゲンヤさんの主張は大変にクリアなものだったと思います。すなわち、性の自己決定と相手方の意思の尊重、性交渉に伴う事故や感染症リスクの認識と低減措置、公衆衛生の保持、性的偏見と差別の排除、包括的性教育の重要性、といったような事柄です。

しかし、一方で寄せられた批判には不当なもの、的外れなもの、そもそもまったく話が噛み合っていないものなどが、多数見受けられました。

一体、「アナルセックスは安全に楽しんでね!」という投稿の、何が問題とされたのでしょうか?

「GC」による反対言説の真意は、どこにあるのでしょうか?


本ワーク・ショップでは、この事件における「GC」の潮流を代表するテクストとして、「『安全に楽しめ』は、誰の安全か」(郡司真子)を取り上げます。(註3

著者の郡司真子さんは、自身も性暴力サバイバーとして、性暴力の被害にあった人々の支援や権利擁護の運動を行う一方で(註4)、所属団体を率いて「女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会」に加わり、「女性スペース」や女子スポーツに関する法律制定に向けた運動を展開するなど、トランスジェンダーの人権抑止や制限を主張してきた人物です。(註5

2023年10月25日付にて下された、最高裁による性同一性障害特例法における性別変更に関する生殖不能要件(同法第3条1項4号)の違憲決定に際しては、同連絡会は反対の声明を発出すると共に、女性への性別変更を希望する者についての陰茎除去規定を盛り込んだ独自改変案を発表するなど、猛烈な反トランスの運動を展開しました。(註6

「GC」と呼ばれる思想を検討するうえで、郡司真子さんのテクストは、その資格充分であると言えるでしょう。

アナルセックスというトピックについて、「GC」の運動は、社会にどのような関与をしようとしているのか?

ネット上に発表される反トランス的テクストについて、私たちはどのようなリテラシーをもってのぞむべきか?

当日、会場にて実際にテクストを読み、考えてみたいと思います。

事前の準備は必要ありません。どうぞお気軽にご参加ください。


***

■読書会 「その場で読んで、考える」<アナルセックス•パニック> に動ぜぬために

■取扱テクスト 安全に楽しめ」は、誰の安全か(郡司真子)

■対象 シスジェンダー中心的ではないフェミニズムの可能性について考えたい個人で、日本語で書かれた新聞を読むことが出来る程度の日本語能力を有する方

■日時 2026年10月3日(土) 午後18時~

■場所 飯田橋(東京都)

※具体的な開催場所は、お申し込み後にご通知致します

※会場には、沿道から段差なくアクセス可能です。また、車椅子に乗ったまま入室可能な、性別を問わずに利用できるトイレが設置されています。

■費用 資料代200円(カンパ歓迎)

■申し込み こちらのフォームよりお申し込みください。

■その他

お持ちの方は、ぜひ色付きのペン(蛍光マーカーが最良)を持参して頂きたく、お願い致します。3色以上お持ちいただけると助かります。

・当日、会場でテクストを読む時間を設けます。テクストはインターネット上に公開されておりますので、各自閲覧のための電子機器をご用意ください。

・会場には無線LANの設備があり、無料でインターネットに接続できます。

事前にテクストを読んで来る必要はありません。未読でもまったく問題ありませんので、どうぞお気軽にご参加ください。

・もちろん、事前にテクストを読んだうえでの参加も大歓迎です。より充実した討論ができるものと思います。

・参加にあたって必要な事柄がある場合は、主催者まで気軽に問い合わせください。可能な限り応対いたします。

・録音、録画、写真撮影は一切お断りいたします。

・当会はジェンダー、セクシュアリティー、人種、民族、国籍、言語、宗教、職業、出身、門地の違いや疾患・障害の有無などに基づいたあらゆる差別を、一切許容しません。

■問い合わせ feministrans★gmail.com(★は@に換えてください)

***

註1 @GenyaFukunaga 2026年8月23日投稿。本ページ下部に掲載の参考資料も参照。

註2 註1にある投稿には、メッセージと共に webサイト「おとなセイシル」(株式会社TENGAヘルスケア提供)に掲載された「性の基礎知識 アナルセックス 男性編」と題されたページのURLが付されていた。

註3 この小論は、福永玄弥の投稿(註1)から3日後の2026年6月26日、web上で発表された。

註4 郡司真子は、自ら「性暴力被害者の会」の代表を務め、性暴力防止や被害者支援の活動をしている。性暴力サバイバーとしての自己の経験を語っているものとして、下記の記事。

註5 郡司真子が代表を務める「性暴力被害者の会」は、「女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会」の構成主体である。

註6 註5掲載PDF、p24以下を参照。


***

参考資料
<アナルセックス・パニック>に至る経緯


※画像はすべてTwitter投稿のスクリーンショット。表示を整えるため、最小限の加工編集を加えた。

※画像をクリックすれば、拡大画像が見られる。また、番号を付したキャプションには、すべて該当投稿へのリンクを付した。


1. 問題の発端

・2026年8月22日 18時31分
看護師を名乗るアカウント(関西ナース、@nurse_kansai)から、以下の投稿がされる。なお、同投稿は計1322万回閲覧され、広範に話題となった。(2026年9月3日調べ)


「関西ナース」によるtwitter投稿。2026年8月22日午後6:31 。看護師から男性の方にお願いがあります。  肛門は排出する場所であって挿入する場所ではありません。 まだ昼ご飯食べてないのに肛門の異物除去をやらされる看護師の気持ちを考えてください。 摘出したらしたで写真撮られて一生病棟の晒し者になります。  最悪論文になってデジタルタトゥーになります。
画像1


2026年8月23日17時20分
画像1の投稿を引用する形で、ゲンヤ(福永玄弥、@GenyaFukunaga)が以下の投稿を行ったことに対し、非難が殺到する。

ゲンヤによるTwitter投稿。  「関西ナース」の投稿を引用して、下記のように述べている。  2026年8月23日午後5:20。  男性だろうが女性だろうがノンバイナリーだろうが、アナルセックスは安全に楽しんでね!詳しくは「セイシル」など信頼のおけるサイトを参照してね、でいいやろうに。いやしくも看護師なら、特定のセックスのあり方をバカにしてんじゃないっすよ。
画像2


3. 投稿者による問題の投稿についての補足・趣旨説明

ゲンヤによるTwitter投稿。  私が問題にしているのは「誰に向けて言ったか」だけでなく、「肛門は排出する場所であって挿入する場所ではありません」と、身体器官の(異性愛規範に基づく)「正しい用途」を持ち出して特定の性行為を逸脱として位置づけてスティグマ化する言説です。
画像3

ゲンヤによるTwitter投稿。  いえ、元ツイには「肛門は排出する場所であって挿入する場所ではありません」と明記されています。看護師という職業を提示しつつ、アナルへの挿入それ自体を否定する一般論を述べているから、そのスティグマ化を批判しているんですよ。
画像4

ゲンヤによるTwitter投稿。  肛門/アナルは重要な器官だからこそ、アナルセックスをするなら、より安全に楽しむための正確な情報が必要だし、したくなければ断る自由が保障されることが大切。一貫してシンプルなことを言ってるだけなんだが。
画像5

ゲンヤによる二つの連続したTwitter投稿。  肛門/アナルは重要な器官性行為のリスクには「より安全」から「より危険」までのグラデーションの違いしかありえない。「完全に安全」も「完全に危険」もない。にもかかわらず、ななぜペニスの膣への挿入を「安全」、アナルへの挿入を「危険」とする二項対立が、これほど広く受け入れられているのか。  どんな相手とのどんな性行為でも、リスクを完全にゼロにすることはできないのだから、(特定の相手との)特定の行為を「安全/危険」という非現実的な二項対立の枠組みにふり分けるのではなく、さまざまな行為のリスクを具体的に知り、行為を「より安全」にするための知識が必要とされてるんですよ。
画像6

ゲンヤによるTwitter投稿。  ひるがえってリスクのない性行為って何や?膣へのペニスの挿入だって感染症や損傷などの「リスク」はある。性行為を「安全/危険」と二分して、特定の行為を後者へ恣意的に分類する道徳的ふるまいがまちがってるねん。性行為には程度の異なるリスクがあるからこそ、より安全に楽しむ知識が必要やねん。
画像7

ゲンヤによる、二つの連続したTwitter投稿のうちの2つ目。  さらに言えば、私は一貫してアナルセックスを「しない自由」を肯定しています。やりたくなければしなければいい、「しない自由」を擁護するためにも包括的性教育を導入して性的同意を教えるべきだ、したければ「より安全」にできるよう知識を身につけろ、ただそれだけのこと。2/2
画像8

ゲンヤによる、「伊藤麻紀」の投稿に対する引用のTwitter投稿。  特定の性行為や実践を「特殊な性嗜好」「アングラ」としてスティグマ化することこそ、安全について語り、正確な知識を得ることを困難にし、性行為をより危険なものにします。だからこそ安全な性行為(性的同意や性行為を拒否することも含む)についての知識を保障する包括的性教育が必要なのです。
画像9

ゲンヤによるTwitter投稿。  アナルセックスを「嫌がる」人は女性に少なくないでしょうが、私が元投稿で問題にしているのは個人の好き嫌いではなく、アナルセックスという性行為そのものをイデオロギー的に否定する言論活動のことです。
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4.投稿者に向けられた脅迫メッセージの一例

ゲンヤによるTwitter投稿。  「もうずっとこのレベルの攻撃が止まらないんですわ。」のテクストとともに、別のアカウントが、ゲンヤの別の投稿を引用して "how to say kill yourself in japanese" と投稿している様子のスクリーンショットが掲載されている。
画像11

 

5、「アナルセックス・パニック」についての解説

ゲンヤによる連続のTwitter投稿。  【アナルセックス・パニックの解説】 宗教右派とGCフェミニズムが「反トランス」で共闘してきたことは知られますが、両者の接近が「アナルセックス」(より正確には、それが「男性的な挿入性」の象徴として表象されること)と「包括的性教育」においても見られることは他国ではよく知られます。1/6  日本社会は長い歴史をと通してアナルセックスを禁止する法制度をごくわずかな期間を除いて持たず(それとて実効性は低かった)、宗教的禁忌も相対的に弱いのでピンとこないでしょうが、LGBTQの攻撃に尽力してきた宗教右派(特にキリスト教右派)にとってアナルセックスは長らく最大級の標的でした。2/6  東アジアでも、韓国の宗教右派は“homosex”という造語を掲げ、同性愛を肛門性交へ還元して攻撃する表現が社会に溢れており、プライドパレードでも見慣れた光景です。他方、台湾の宗教右派は2010年代以降「同性愛者の人権は認めるが肛門性交は認めない」という奇妙な言説まで作り出しています。3/6  そして宗教右派がLGBTQという「脅威」の供給源として名指すのが、グローバリズムと、その象徴としての国連、さらに国連を中心に広がった包括的性教育です。「包括的性教育が子どもに肛門性交を教え、それを世界に拡散している」というデマは、宗教右派が作り出した反LGBTQ運動の定番の言説です。4/6  他方、GCフェミニズム陣営では、ゲイ男性や男性間性行為が「男性性」「挿入」「ポルノ」「性的搾取」と結びつけられ、攻撃の対象とされます。GCフェミニズムにとって肛門性交は単なる性実践ではなく、男性の侵入性や暴力性の象徴として意味づけられ、その延長で包括的性教育も攻撃対象となります。5/6  【おまけ】 拙著『性/生をめぐる闘争』では、キリスト教右派がどのようにアナルセックスや包括的性教育を攻撃してきたか、そうした「反LGBTQ」言説がどうやってGCフェミニズムと結びついているかを詳述しています! 読んでください!買って!(図書館でもいい! ぜひ!!
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6.その他、関連投稿


ゲンヤによる連続のTwitter投稿。  ここ数日アナルセックスの話ばかりで私自身うんざりしていますが、私が否定論者との議論を続けているのは、アナルセックスを否定するフェミニストのなかに「クィア / トランス / セックスワーク / 包括的性教育 / Woke / グローバリズム / 移民」批判を一続きのものとして語る層がいるからです。1/4  もちろん、異性愛規範から逸脱的な性行為への嫌悪感情や道徳規範からこれを否定する人もいます。しかし重要なのは、反トランス・反クィア・反包括的性教育を相互に接続させ、一つの政治的言説を形成しているフェミニズムが層を成すこと。その布置を見出し、批判的介入を実践することが重要です。2/4  信じがたいことに「反セックスワーク」「反トランス」のためには高市やトランプ政権を擁護するフェミニストさえいる。実際、アメリカや韓国では「反トランス」の一点共闘でキリスト教右派と手を組むフェミニストもいる。アナルセックスは単なる道徳問題というより、重要な政治的争点なのです。3/4  射程を広げて右派の立場から見ると、極右の参政党は「反フェミニズム」ですが、反「クィア / トランス / 包括的性教育 / Woke / グローバリズム / 移民」という立場は共有されます。これらのイシューをどのような層が、どんな枠組みで論じているかを検討することは喫緊の課題です。4/4
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ゲンヤによる連続のTwitter投稿。  2022年、神道政治連盟国会議員懇談会で楊尚眞(弘前学院大学)による「LGBTの権利」を否定する講演録が配布されました。彼は韓国出身で、米国でキリスト教原理主義に傾倒した人物ですが、このように国境や宗派を越えて「反LGBT」言説が各地の右派勢力の間を流通する例は枚挙にいとまがありません。 1/3   楊尚眞は「LGBT」の自殺率の高さを認めつつ、「社会的な差別が原因ではない」と主張します。このレトリックは、「女子供の安全」を強調する一方で、LGBTの高い自殺リスクと関連する差別やスティグマなどの社会的要因を後景化し、別の「本当の原因」に帰そうとする言説(スクショ)とも地続きです。 2/3  日本では自民党と旧統一教会との接点が様々な次元で明らかにされています。そして旧統一教会系の反共主義運動も「反LGBT」を重要な課題に掲げています。「欧米の言説をそのまま持ってくる」というより、反LGBT言説そのものが国境や宗派を越えて流通し、各地の右派政治と接合しているのです。 3/3
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